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セレクション

磁器
青磁象嵌花蝶鳥紋碗
12世紀
青磁象嵌花蝶鳥紋碗 
高さ8.5 cm、直径 20.0 cm

  高麗青磁によく見られる植物草花紋様、例えば牡丹、菊、葦、柳の木等を使用し装飾を行っています。時折陶工が花の間に蝶や禽鳥紋を散りばめ、花の間で蝶が舞い、枝に鳥が棲む、生き生きとして元気の良い自然の情景をよく見かけます。

  この碗は直立した口唇部、深い弧壁、碗の中心のへこみ、平底、圏足で、底部には亀裂があり3つの支釘痕(目跡)が残されています。釉質はしっとりと潤い、一部の釉面に開片(貫入)とわずかに鉄斑が生じ、圏足の釉層は比較的薄く、一部褐色の素地を呈しています。紋様全体は象嵌技法で装飾されています。

  碗の外壁には四方に円形の開光(窓絵)があり、内側に牡丹折枝が埋め込まれています。開光の間に唐草が散りばめられ、下腹には二重蓮弁紋が輪に飾られ、各紋様は弦紋で区切られています。碗心は菊紋で、外側に向かって順番に二重蓮弁紋に連珠紋および双圏弦紋が含まれています。内壁は二組の対になった花折枝があり、間隔を置き交互に配されています。花の見え方は様々で、姿はそれぞれ異なります。そのうち一角の花折枝に一羽の白鶴がとまっており、爪と嘴が黒くなっています。また、精巧で可愛らしく、花折枝の間に四対の蝶が飛び交っています。

  雲鶴図像は高麗人に大変好まれ、常に陶磁器を装飾する題材とされました。一説には雲鶴紋が高麗で流行したのは、おもに中国の道教思想の影響を受けていると言われています。道教を深く信仰する北宋の徽宗と高麗王室の間には密接な往来は、朝鮮半島が道教を取り入れたことと無関係ではありません。《宣和奉使高麗図経》の中に、「天子(北宋徽宗)が遐方(かほう。辺鄙な場所)を気にかけ、妙道(素晴らしい真実)を聞きたいと願い、使者を派遣するため、羽流の二人が赴いた。唱道者を慎重に選択し、訓を以って導いた。王俣(高麗睿宗)は信仰に篤い」という記載があり、当時の王室貴族と士大夫の間で流行した詩文にも、道教思想的表現がよく見られます。

  そのほか、高麗時期の詩文作品に、蝶の描写について、陶淵明及び道家思想との関連も見られます。例えば高麗文人の李仁老(1152-1220)の〈和帰去来辞〉に、「求不過於無求,化蝶翅而猶悦」という内容、また、《東文選》の題名〈桃源図〉という題名の詩文の中でも、「意外にも曾蝶化なことがもあって、互いにこのところが仙寰 (誰料是身曾蝶化,相誇此處信仙寰)」の詩文があります。

  この碗の外壁は「黒地象嵌」手法で唐草紋がはめ込まれていますが、この技法も「逆象嵌(ぎゃくぞうがん)」と称します。方法は、素地の紋様の背景の胎土を削り落とし、白色、赤褐色の磁土のうち1種類を選んで埋め込むと、青釉色で白色の背景または黒色の背景の中に紋様が現れ、「白地象嵌」または「黒地象嵌」と称されます。

 

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